養豚場経営における大きな課題の一つに、周辺住民への対応があります。養豚農業実態調査報告書(令和四年度 全国集計結果、一般社団法人日本養豚協会)によると、周辺住民からの悪臭苦情件数は減少しているものの、糞尿処理の施設を持っていない養豚場は2割以上あります。全国の牛・豚・鶏の糞尿などの家畜排せつ物のうち約3割が豚由来であることから、豚舎から発生する糞尿や汚水などを適切に処理し、基準以上の良好な処理水にすることが、周辺住民の生活環境を守ることに繋がります。
放流水質が悪化する要因
多くの施設では廃水処理における窒素除去に関して、水質汚濁防止法をクリアできるレベルにすることが難しく、暫定基準のT-N窒素含有量130㎎/ℓの達成さえも難しいのが現状です。
その最大の要因は夜間に汚水の流入が無くなるためです。豚舎内の作業が昼間だけなので、夜間には水処理をつかさどる微生物の餌(汚水)が無くなり、溶存酸素濃度の必要量は極端に少なくなります。
しかしながら、夜間は無人運転であるため送風量の調整は難しく、溶存酸素濃度が上がり過ぎることで微生物の活動に支障をきたし、水質悪化に繋がります。